土地 — 宅地に向く地形と災害リスクを地形分類で判定する
この章の主張
- 宅地適性は地形分類(山地→丘陵→台地→低地)の序列で大枠が決まる。
- 同じ地形でも標高と排水性で安全度が分岐する(台地縁辺・低地内ミクロ地形)。
- 切土と盛土、谷埋め盛土、干拓地・埋立地は地震時リスクが大きい点を必ず押さえる。
1. 地形分類の全体像 — 山地・丘陵・台地・低地の序列
土地問題は「この地形は宅地に向くか」「どんな災害に弱いか」を、27 年間繰り返し問うてきました。出題者は地形の名前を覚えさせるのではなく、標高と排水性で並ぶ宅地適性の序列を答えさせます。最初に固定してほしい軸は、台地・段丘がベスト、低地(特に後背湿地・三角州)がワーストという序列です。
国土交通省は宅地防災マニュアルで、地形ごとの災害特性と造成上の注意点を整理しています(→ 国土交通省 宅地防災マニュアル)。
1.1 宅地適性の序列を一目で覚える
序列の基本は「台地・段丘 > 丘陵地 > 山地 > 低地」です。低地でも自然堤防は比較的安全、後背湿地・三角州は最も危険、というミクロな差は H2.3 で扱います。
| 地形 | 宅地適性 | 主な災害リスク |
|---|---|---|
| 台地・段丘 | ◎ | 縁辺部の崖崩れのみ要注意 |
| 丘陵地 | ○ | 造成地の盛土すべり |
| 山地 | △ | 土砂災害・地すべり |
| 低地(自然堤防) | △ | 洪水時の浸水 |
| 低地(後背湿地・三角州) | × | 液状化・浸水・地盤沈下 |
1.2 標高と排水性が宅地適性を決める
宅地適性は 標高(洪水を受けにくいか)と排水性(水はけ)と地盤の固さの 3 要素で説明できます。台地はこの 3 つすべてに優れ、低地は 3 つすべてに弱いという構図です。
2. 山地・丘陵地と造成地 — 切土・盛土と災害リスク
山地は急斜面のため土砂災害・地すべりのリスクがあり、丘陵地は切土と盛土による宅地造成で人工的にリスクが発生します。切土は元の地盤を削るので比較的安全ですが、盛土は新しく土を盛るため軟弱で、地震時には沈下や流動が起こりやすくなります。
2.1 谷埋め盛土と腹付け盛土の地震時リスク
谷を埋めて宅地にした「谷埋め盛土」と、斜面に盛り足した「腹付け盛土」については、地震時に大きくすべる事例が、阪神・淡路大震災以降の調査で繰り返し報告されています。古い地形図と現況を照合すれば、もとが谷や池沼であった造成地を見抜けます。
2.2 造成宅地防災区域と盛土規制法
宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)は、危険な盛土を全国どこでも罰則対象に置き直しました。令和5年5月施行の改正で、旧法の規制対象が全国に拡大され、許可制と勧告・命令の体系が一本化されています。
3. 台地・段丘と低地 — ミクロ地形で安全度が分岐する
台地・段丘は地盤が固く水はけが良く、宅地として最も安全な地形です。ただし縁辺部(崖端)・台地内の谷底低地・かつての河道(旧河道)は要注意です。低地では地形によって安全度が大きく分岐します。
3.1 台地でも危険な場所 — 縁辺部・谷底・旧河道
台地が安全だからといって、台地のどこでも安全というわけではありません。縁辺部は崖崩れ、谷底低地は浸水と軟弱地盤、旧河道は液状化と不同沈下のリスクを抱えます。
| 台地内の位置 | リスクの種類 | 注意度 |
|---|---|---|
| 中央部 | ほぼなし | 低 |
| 縁辺部(崖端) | 崖崩れ | 高 |
| 谷底低地 | 浸水・軟弱地盤 | 高 |
| 旧河道 | 液状化・不同沈下 | 高 |
3.2 低地のミクロ地形 — 自然堤防・後背湿地・扇状地・三角州
低地は一括して「危険」ではなく、ミクロな地形差で安全度が分岐します。
- 自然堤防: 河川の氾濫で土砂が堆積した微高地。低地の中では比較的安全
- 後背湿地: 自然堤防の背後の低湿地。軟弱地盤で液状化と浸水リスクが高い
- 旧河道: かつて川が流れていた跡。液状化が起こりやすい
- 扇状地: 山地から平地への出口に砂礫が堆積。普段は水はけ良好だが土石流のリスク
- 三角州: 河口の砂泥堆積地。軟弱地盤と液状化、津波・高潮の影響大
3.3 干拓地・埋立地の液状化リスク
干拓地は海水面より低い土地が多く、堤防が決壊すれば浸水します。埋立地は海面より高い場合が多いものの、地盤が緩く地震時に液状化が起こりやすい性質です。砂丘は標高は確保できますが、砂質地盤のため地震時の挙動に注意が必要です。
4. 地目・地積・宅地造成の見極め
登記簿上の地目(表題部に記載される土地の用途区分)と現況の地目は、一致しないことがあります。買い手側で確認するときは、登記地目と公簿面積だけでなく、現況地目・実測面積・造成履歴を組み合わせて判断します。
4.1 公簿面積と実測面積のズレ — 縄延びと縄縮み
明治期の地租改正時に作成された旧公図は精度が低く、登記簿の公簿面積と現況の実測面積が食い違うことがあります。実測が公簿より大きい場合を「縄延び」、小さい場合を「縄縮み」と呼びます。売買契約では公簿売買と実測売買のどちらで取引するかを決め、引渡し時の精算条項を確認することが大切です。
4.2 造成履歴の見極め — 古い地形図・航空写真で照合する
新しい造成地は古い地形図や航空写真と照合すれば、もとの地形(谷・池沼・水田)が見えてきます。国土地理院の「地理院地図」「旧版地形図」と、自治体が公開する「ハザードマップ」を組み合わせれば、宅地として買って良いかの一次判断ができます。
このカテゴリから出る過去問(公式由来確認済の問題)
- 令和5年度試験 問49 — 論点: 山地・台地・低地と宅地適性。出典: 一般財団法人 不動産適正取引推進機構(→ RETIO 試験情報)
- 令和4年度試験 問49 — 論点: 低地のミクロ地形と災害リスク。出典: 同上
- 令和3年度12月試験 問49 — 論点: 造成地と切土・盛土。出典: 同上
- 令和3年度10月試験 問49 — 論点: 台地・段丘の宅地適性。出典: 同上
- 令和2年度12月試験 問49 — 論点: 扇状地・自然堤防・後背湿地。出典: 同上
本カテゴリの過去問27年分の集約・解説は Phase 3 で
/takken/quiz/{year}/{q-number}/に展開予定です。
参照条文・参照資料
- 宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法): e-Gov 盛土規制法
- 不動産登記法(地目・地積・地目変更登記): e-Gov 不動産登記法
- 国土交通省 宅地防災マニュアル: → 国土交通省 宅地防災マニュアル
- 国土交通省 土地白書: → 国土交通省 土地白書
- 国土地理院 地理院地図・旧版地形図: → 国土地理院
関連カテゴリ
- 6_2 不当景品類及び不当表示防止法 — 不動産広告での土地表示ルール
- 2_6 盛土規制法 — 宅地造成と盛土の規制
- 6_5 建物 — 建物の構造と耐震基準
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6_5 建物 — 土地の次は、その上に建つ建物の構造と耐震性に進みます。
本教材は 令和8年度(2026年度)宅地建物取引士資格試験 を対象として、2026 年 4 月 1 日時点で施行されている法令 に基づき執筆しています。法改正は
/takken/changelog/に掲載します。