住宅瑕疵担保履行法 — 新築住宅の資力確保措置を供託か保険かで担保する

この章の主張

  • 新築住宅を引き渡した売主業者と請負人は、買主・注文主を保護するため資力確保措置を必ず取る。
  • 措置の手段は供託または保険の二択で、買主の選択肢ではなく業者の選択肢である。
  • 基準日(3月31日・9月30日)から3週間以内の届出を怠ると、50日経過後は新築住宅の売買契約を結べなくなる。
住宅瑕疵担保履行法が対象とする3要素の分解図

1. 履行法の対象範囲 — 新築住宅を引き渡す業者と請負人

住宅瑕疵担保履行法は、品確法が定める10年間の瑕疵担保責任を実効化するための法律です。新築住宅の売主が宅建業者である取引、または請負人が建設業者である工事を対象に、資力確保措置を義務付けます。買主や注文主が消費者であることが大前提で、業者間の売買は対象外です。

履行法第2条第7項: 「特定住宅瑕疵担保責任とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律第九十四条第一項又は第九十五条第一項の規定による担保責任をいう」(e-Gov 住宅瑕疵担保履行法

1.1 新築住宅の定義 — 建設工事完了から1年未満かつ未居住

新築住宅と既存住宅の左右比較

品確法第2条第2項は、建設工事の完了の日から1年以内で、かつ人の居住の用に供したことがない住宅を新築住宅と定義します。一度でも入居されていれば、たとえ1年以内でも新築住宅ではありません。中古住宅の売買は履行法の資力確保措置の対象外です。

1.2 対象部位 — 構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分

対象部位の階層ツリー

品確法第94条が引き受けさせる瑕疵担保責任は、構造耐力上主要な部分雨水の浸入を防止する部分に限定されます。基礎・柱・梁・床版・屋根版が前者、屋根・外壁・開口部のサッシ周りが後者です。床のきしみや壁紙のはがれは履行法の対象には入りません。

2. 資力確保措置 — 供託または保険加入の二択

供託と保険の左右比較

履行法第11条は、新築住宅を引き渡した売主業者と請負人に対し、住宅販売瑕疵担保保証金の供託または住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結のいずれかを義務付けます。「どちらか」であって両方ではなく、また「物件ごとに」ではなく「業者ごとに」選択する制度です。

履行法第11条第1項: 「宅地建物取引業者は、自ら売主となる売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について、当該買主に対する特定住宅販売瑕疵担保責任の履行を確保するため、(中略)住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならない」

2.1 保険契約の3要件 — 保険金額2,000万円以上・期間10年以上・指定保険法人

保険契約の3要件カード

履行法第2条第6項は、住宅販売瑕疵担保責任保険契約の要件として次の3つを並列で求めます。保険金額が2,000万円以上保険期間が引渡しから10年以上国土交通大臣が指定する保険法人との契約であること。1つでも欠ければ資力確保措置として認められません。

要件内容
保険金額2,000万円以上
保険期間引渡しの日から10年以上
保険者国土交通大臣が指定する保険法人
解約制限国土交通大臣の承認がない限り解除不可

2.2 業者倒産時の直接請求 — 買主が指定保険法人に直接保険金請求できる

業者倒産時の直接請求フロー

保険を選択した場合、業者が倒産しても買主は指定保険法人に直接保険金を請求できます。供託の場合も、瑕疵が発見されたときは買主が供託所から還付請求できます。どちらも「買主が業者経由でしか動けない」状態を避ける設計です。

3. 基準日と届出 — 3月31日と9月30日から3週間以内に届出

基準日と届出のタイムライン

履行法第12条と第13条は、3月31日と9月30日の年2回を基準日と定め、各基準日から3週間以内に免許権者へ資力確保措置の状況を届け出るよう求めます。届出先は宅建業者なら免許権者(大臣または知事)、建設業者なら国土交通大臣または都道府県知事です。

履行法第12条第1項: 「宅地建物取引業者は、基準日ごとに、当該基準日に係る住宅販売瑕疵担保保証金の供託及び住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結の状況について、国土交通省令で定めるところにより、その免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない」

3.1 届出義務違反の効果 — 基準日後50日経過で新築住宅の売買契約を結べない

50日経過後の新規契約禁止フロー

履行法第13条は、業者が基準日における届出をしなかった場合、基準日の翌日から50日を経過した日以後、自ら売主となる新築住宅の売買契約を新たに締結してはならないと定めます。すでに引渡し済みの瑕疵責任は当然残り、加えて新規契約の停止という業務制限がかかる二段構えです。届出を完了すれば新規契約禁止は解除されます。

このカテゴリから出る過去問(公式由来確認済の問題)

履行法は例年問45(または問41近辺)で1問出題されます。本カテゴリは年1問固定の小論点で、過去問27年分から論点パターンが安定して抽出できます。各問題の解説リンクは Phase 3 で /takken/quiz/{year}/{q-number}/ に展開予定です。

  • 令和元年度試験 問45 — 論点: 保険契約の要件(保険金額・期間・指定保険法人)
  • 令和2年度10月試験 問45 — 論点: 基準日届出と50日経過後の新規契約禁止
  • 令和3年度10月試験 問45 — 論点: 新築住宅の定義(1年以内・未居住)
  • 令和4年度試験 問45 — 論点: 対象部位(構造耐力主要部分・雨水浸入防止部分)
  • 令和5年度試験 問45 — 論点: 供託と保険の選択・業者倒産時の直接請求

出典: 一般財団法人 不動産適正取引推進機構(→ RETIO 試験情報

参照条文

  • 住宅瑕疵担保履行法 第2条(定義): e-Gov 履行法
  • 住宅瑕疵担保履行法 第11条(住宅販売瑕疵担保保証金の供託等): 同上
  • 住宅瑕疵担保履行法 第12条(住宅販売瑕疵担保保証金の供託等の届出): 同上
  • 住宅瑕疵担保履行法 第13条(届出をしない場合における売買契約の締結の制限): 同上
  • 住宅瑕疵担保履行法 第19条(住宅販売瑕疵担保責任保険契約): 同上
  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律 第94条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任): e-Gov 品確法
  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律 第95条(請負人の瑕疵担保責任): 同上
  • 国土交通省「住宅瑕疵担保履行法の概要」: → 国土交通省 制度ページ

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